記念すべきゴマのフィナンシェ。

   

僕にはわりとイケメンな従兄弟がいる。

小さい頃から知ってるし、わりと慕われている(と思っているだけかもしれない)。

僕が髪を切れるようになった頃から、カットやらパーマやらのモデルとなってくれているし、今もお客様として横浜の方から銀座まで通ってくれている。

彼の職業はパティシエだ。今3年目か4年目くらいだと思う。たぶん。

お菓子も好きだし、作ることも好きで、自分が作ったものが誰かを喜ばせることを楽しんでいると思う、そんなスイーツ系男子だ。

ただ、最近は甘さだけじゃなくなってきたと思う。

今のお店で働くことを決めるとき、迷っている彼から相談を受けた。都内の名前の通った(僕ですら知っている)洋菓子屋にするか、地元に根付いた洋菓子にするか。

彼は迷った末に、地元の洋菓子屋を選んだ。

理由は確か消極的なものではなかったと思う。

働き出して、

1年目は、ひたすら卵を割ってたそうで。
2年目は毎日高温の窯を前に、ひたすら焼菓子を焼いていたそうで。
愚痴をこぼすこともあったし、初めてできた後輩の指導に悩んでいる時もあった。
それでも、自分が教えを受ける人には恵まれたといつも言ってた。今も言っている。できることが増えて楽しんでいる様子も感じられて、従兄としては安心していた。

だいたい1〜2ヶ月周期で髪を切るタイミングで会うことになる。僕も彼もファッションが好きだから、服の話がほとんど。あとは女の子の話。

それと毎回楽しみにしていたのは、

彼は、髪を切るついで(髪がついでかもしれないが)東京にあるお菓子のお店を食べ歩いていた。自分で調べ、足を運び、食べまくっていた。もちろん僕と似て全く太らずに。

その話を聞くのが楽しかった。
最初は、自分から食べたお菓子が美味いとかヤバいとかだったのが、具体的に何が凄いとかの話になり、最終的には僕から聞くとなんともプロっぽく感じる返しになっていった。

その頃から、仕事終わりに厨房で、自分でお菓子を創作している話も聞くようになった。

ちょっとかっこ良くなってきたなと思うようになったのもこの時だった気がする。

今年の2月僕は結婚式をしたんだけれども、その時の引き菓子は彼のところの焼菓子だった。

結構な評判だった。本当に結構な評判だったし、選ぶ段階で食べた僕ら夫婦も本当に美味しいと思った。

仕込みから焼きまで、全てを彼がやってはいないけど、なんかそれは、きっと思いがこもっていたと思う。新郎の従弟のパティシエの作ったというエピソードに加えて、彼の思いも入っていたからだと勝手に思っている。

4月に僕が銀座にうつってからも変わらず来てくれて、ここ最近は年下の従弟というより、1人の友人というか1人の大人というか、肩を並べている感覚を覚えている。顔つきが精悍というか。単に疲れているだけかもしれないけど。

前回7月に来たときに、お店の中の新作のお菓子のプレゼンの場に、初めて自分で考えて作った焼菓子を出した話をした。

ゴマのフィナンシェを。

それを作った理由は、ごまを使ったお菓子がないからという至極シンプルな理由だった。

今回、つい数日前に来たとき、もちろん結果を聞いた。

もうお分かりだと思うが、それは採用されて、数ある焼菓子の中に見事ラインナップされたらしい。

自分のことのように嬉しかったし、誇らしい気持ちになった。いや、もう自分が新作のお菓子をつくってそれが採用されてような気持ちになった。違うけど。

その日の支払いを終えて見送る時、彼はお菓子をくれた。ゴマのフィナンシェと僕が好きなダックワーズを。

めちゃくちゃ美味かった。

甘すぎずゴマの風味がしっかりして、歯触りが上品なフィナンシェ。お世辞なく美味しいし、オシャレな和菓子のような、シブい洋菓子ような。
中々センスあんじゃねーか。と。

楽しみなことが増えた気がして、とてもいい気持ちだった。

それと同時に自分への刺激にもなった。

良いカタチの、あったかい気持ちになる刺激をくれる人は数少ない。感謝。

そんな記念すべき、ゴマのフィナンシェのお話でした。


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